誰からも必要とされない孤独は癒されません。


◆吉野
  『孤独地獄』
 (1)人から必要とされた時、私達は力がみなぎり、元気が湧いてきます。
 自分を必要としてくれる人との出会いには、人生を変えるほどの力があります。
お父さんたちが満員電車に揺られて出勤し、夜は遅くまで残業して、疲れた身体に鞭打って頑張れるのも、奥さんや子供に頼られ、必要とされているからに他なりません。
 会社でも同じです。
「会社には君の力が必要だ」と励まされれば勇気百倍。
 力がみなぎります。

(2)自分を必要としてくれたことに対する喜びは、刹那的な肉体的快楽とは比べられません。
ところが、「えっ、お前いたのか」とか、そんな扱いを受けると途端に意気消沈してしまいます。
 家庭では相手にされない。
 職場ではいてもいなくてもいい。
・・・・
 やがて、辛く、寂しく、死にたくもなってきます。
 自殺者の主な要因は、実はここにあるのではないかと言われています。

(3)ある学者が多くの自殺者の遺書の内容を研究しました。
 結果、借金や病気や人間関係のトラブルや絶望は、自殺者にとって、それほど重大な要素ではないことがわかりました。
 遺書から明らかになったことは、自殺者が「自分が周りの人たちにとってお荷物になった」と感じたことでした。
 「自分なんか、いない方がいいのだ」
そんな孤独感が人を死に誘うことがわかりました。

(4)大金や贅沢品に囲まれ、美味しい食事をして、好きな場所に自由に行けても、誰からも必要とされない孤独は癒されません。
 誰もが、必要とし必要とされる人との絆を求めているのは、その為ではないでしょうか。
そんな人との出会いを求めて、老いも若きも、男も女も、「寂しい、寂しい」とさ迷い続けます。
  仏教ではこれを「孤独地獄」と呼んでいます。